ベルギーのフラームス=ブラバント州を舞台にしたドワーズ・ドール・ヘット・ハーへラント(UCI1.Pro、通称DDHH)は、ベルギーのシリーズ戦「ビンゴール・サイクリングカップ」の1戦に数えられるワンデーレース。2度の開催中止を挟んで今年15回目という新しい大会だが、未舗装の農道や生活道路を多く取り入れる「グラベル」ロードレースという一風変わった特徴を持つ。
それゆえベルギーファンからの注目度は高く、ニキ・テルプストラ(オランダ、現トタル・ディレクトエネルジー)やマチュー・ファンデルポール(オランダ、現アルペシン・フェニックス)といった石畳クラシックやシクロクロスのスペシャリストが過去の優勝者リストに揃う。今年はクリテリウム・デュ・ドーフィネ、そしてイル・ロンバルディアと同時開催となったものの、4のワールドチーム(トレック、ドゥクーニンク、ユンボ、サンウェブ)を含む19チームが参加した。
元シクロクロス世界王者ゼネク・スティバル(チェコ、ドゥクーニンク・クイックステップ)やアルペシン・フェニックス、テレネット・バロワーズ・ライオンズ、パウェルスサウゼン・ビンゴールといったシクロクロスチームも参加したのもこのレースならではの特徴だ。
大周回と小周回を2周ずつ巡る180kmコースには合計14の未舗装路区間と、7つの登坂区間が設定される。同じく未舗装路を特徴とするストラーデビアンケと比べると平坦なコース設定であり、毎年出入りの激しいサバイバルレースが展開されることが特徴だ。
8月の暑さで乾いた未舗装路レースで逃げたのはマーティン・セルモン(ドイツ、サンウェブ)を含む6名。ドゥクーニンク・クイックステップやアルペシン・フェニックスがコントロールする集団がフィニッシュまで70kmを残して逃げグループを視界に捉えると、集団からは元CXベルギー王者のトーン・アールツ(ベルギー、テレネット・バロワーズ・ライオンズ)らがジャンプする。パンクやチェーントラブル、落車、突如現れる路上の障害物といった「ベルギーのクラシックレースらしい」展開の中、再編成された14名の先頭グループがレース後半戦に先行する形となった。
ヤニック・シュタイムレ(ドイツ、ドゥクーニンク・クイックステップ)やパスカル・エーンクホーン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)、ニルス・エークホフ(オランダ、サンウェブ)、ジョナス・リカールト(ベルギー、アルペシン・フェニックス)、そして超幅狭ハンドルでお馴染みのヤンウィレム・ファンシップ(オランダ、ビートサイクリングクラブ)といったメンバーで構成された逃げグループは、アタック合戦が続くメイン集団に対して10〜30秒差で逃げ続ける。すると、フィニッシュまで29km地点にある未舗装セクター11「デーメルメイク(距離4000m)」で、先頭グループからリカールトとエークホフが抜け出した。
コーナーイン側の芝生区間を使うアグレッシブな走りで後続との差をつけた先頭2名。残り22km地点の最終周回突入時点で先頭2名から追走12名まで37秒、今ひとつ統率の取れないメイン集団まで1分16秒という状況に。アタック合戦に陥ることなく、唯一快調にローテーションを回した先頭2名は数的不利を覆しペースを保ち続けた。
メイン集団はドゥクーニンクやユンボ・ヴィズマによる必死のペースアップで追走12名を捉えたものの、その前を逃げるエークホフとリカールトには届かない。逃げ切りを確定させた2名がフィニッシュ前に用意された石畳登坂「シタデル(距離1000m)」に入ると、「エークホフのペースが苦しそうにしているのを見て踏み込んだ」と言うリカールトが先行。最後は観客とハイタッチする余裕を保ったままフィニッシュラインを駆け抜けた。
「独走でフィニッシュするのはいい気分だ。調子良いと感じていたけれど、その一方で確証は無かったんだ。彼(エークホフ)が疲れているように見えたので最後まで一緒に逃げてチャンスをモノにできた。土埃のレースは大好きで、先週のロンド・ファン・フラームス〜ブラバントでも良く走れた。チームとして戦略的に動けたし、これからのレースにも準備ができている」と、レース後のインタビューに答えたリカールト。スポートフラーンデレン・バロワーズから2019年に現チーム入りしたリカールトにとっては嬉しいキャリア初勝利。メイン集団のスプリントをCX選手のジャンニ・フェルメルシュ(ベルギー、アルペシン・フェニックス)が制し、アルペシン・フェニックスにとってはワンスリーフィニッシュとなった。
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August 16, 2020 at 02:25PM
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