ベルギー各地を転戦して争われるスーパープレスティージュの第4戦の舞台は、アントワープにある街メルクスプラス。郊外の草地と森を組み合わせたコースはテクニカルで、特に急勾配のキャンバーを小刻みに登り降りする森林セクションは乗車・降車の判断を分ける難しいもの。決定打が生まれにくいコースは雨に濡れたことで落車を誘発させ、男女レース共に力とテクニックをぶつけ合う名勝負が繰り広げられた。
男子レースで好ダッシュを決めたのはクィンティン・ヘルマンス(ベルギー、トルマンスシクロクロスチーム)とラース・ファンデルハール(オランダ、テレネットバロワーズ・ライオンズ)で、ヘルマンスが落車したことで3番以降が引っかかったことでファンデルハールが独走態勢に。かつてオランダ選手権と欧州選手権で優勝している29歳は20秒差を得て、レース中盤まで一人旅を続けることになる。
追走グループを率いたのは11月11日に開催された第3戦で勝利した好調ローレンス・スウェーク(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)で、徐々にファンデルハールとの差を詰め、全9周回中の5周目に30分間逃げ続けていたファンデルハールをキャッチする。後方からは第1戦勝者トーン・アールツ(ベルギー、テレネットバロワーズ・ライオンズ)も追いついた。
この時点でテレネットバロワーズ・ライオンズは2対1と数的優位を築いたものの、6周目にマイケル・ファントーレンハウト(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)が、更に第2戦勝者で欧州王者のエリ・イゼルビッド(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)も合流、さらに序盤力を使ったファンデルハールが遅れがちになるなど状況をひっくり返されてしまう。状況を打開するべくアールツがアタックするも決定打には繋がらず、ファントーレンハウトが8周目にカウンターアタックで抜け出した。
「スタートで出遅れ、一人ずつ抜いて先頭争いに加わったとき、アールツの走りにキレがないと分かった。最終周回に入った時のリードは数秒。何も考えずにただひたすらペダルを回し続けたよ」と言うファントーレンハウトは、アールツとチームメイトのイゼルビッドに対してノーミスで森林セクションを通過する。最終周回突入時5秒だったリードは9秒までに広がった。
残るフラットセクションを危なげなくこなしたファントーレンハウトは、イゼルビッドを8秒、そしてスウェークとアールツを13秒引き離してフィニッシュへ。ビッグレースでコンスタントに上位に食い込むものの、勝利から遠ざかっていた26歳が涙と共にスーパープレスティージュ初勝利を挙げた。
「素晴らしいレースになったよ。大きなレースで勝利がなかったので尚更だ。特にテクニカルな森林セクションは僕向きで、大きな差がつきやすい砂もうまくこなすことができた」と振り返るファントーレンハウト。アールツは最後の砂場でイゼルビッドから遅れを取り、さらにゴールスプリントでスウェークに破れて4位に。レースをひっくり返したパウェルズサウゼン・ビンゴールが表彰台独占に成功している。
ここまでスーパープレスティージュは4戦を終え、4選手が勝利を分け合う形に。獲得ポイントで争われるシリーズランキングはイゼルビッドが2位アールツを3ポイント、3位スウェークを5ポイント上回る僅差で首位を保持している。
55名が出場した女子レースは、序盤からシクロクロス界を席巻するオランダ勢がトップグループを築き上げる。世界王者セイリン・アルバラード(オランダ、アルペシン・フェニックス)、ルシンダ・ブラント(オランダ、テレネットバロワーズ・ライオンズ)、そしてアンマリー・ワースト(オランダ、777)が飛ばしに飛ばし先頭グループを築き上げた。
中でもペースを作ったのは第3戦で勝利しているブラントだった。ブラントの刻むハイペースにワーストは徐々に遅れ、レース終盤に入ってスタートで出遅れたデニセ・ベッツィマ(オランダ、パウェルズサウゼン・ビンゴール)が3位に浮上する。昨シーズンから何度も好勝負を繰り広げてきたブラントとアルバラードが火花を散らしながら先頭グループを築きあげた。
先頭グループに動きが生まれたのは、全6周回中の5周回目終盤にあるサンドセクションだった。先頭で砂に入ったブラントは轍を見失って砂に捕まり、上手くクリアしたアルバラードが7秒差で最終周回突入の鐘を聴く。しかしパワフルかつスムーズな走りを披露するブラントは、一時決まりかけたかに思えた差をすぐに埋めてプレッシャーをかけていく。すると、滑りやすいキャンバーに前輪を滑らせたアルバラードが落車した。
アルバラードはすぐさまレースに復帰したものの、大チャンスを掴んで逃げるブラントの背中は遥か彼方。世界王者は再びコーナーでスリップダウンし、ベッツィマにパスされたことで3位へと転落してしまう。遅れたライバルを尻目にブラントがスーパープレスティージュ2連勝を挙げることとなった。
ブラントはシリーズランキングで首位アルバラードに1ポイント差まで詰め寄り、終始パワフルな走りで追い上げ続けたベッツィマが2位。「タフなレースで限界に達してしまい、何度もミスを重ねてしまった」と悔やむ世界王者は3位に入っている。
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November 23, 2020 at 03:55PM
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手に汗握る雨の泥レース ファントーレンハウトが涙のスーパープレスティージュ初勝利 - スーパープレスティージュ2020-2021第4戦 - cyclowired(シクロワイアード)
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