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Onのレーシングシューズ「Cloudboom」は、“厚底”を選ばず速さを競う - WIRED.jp

ランニング界では10年ほど前、「ベアフットランニング」の革命が起きていた。当時のトレーニングシューズは裸足での走り方を手本にデザインされ、できるだけ少ない材料が用いられていた。

ところが、それから数年が経って状況は一変している。いまではロードレース用に設計されたシューズには、ランナーを前へと進めるフォーム(発泡体)の厚底ソールと、カーボンファイバーのプレートが装着されている。

こうした変化はナイキのデザイナーのおかげだ。ナイキがマラソンシューズ「Vaporfly(ヴェイパーフライ)」の最初のモデルを2017年に発売して以来、シューズメーカー各社はナイキに追いつこうと躍起になっている。ここ数年のアディダスやサッカニー、ホカ オネオネ、アシックスといったメーカーはナイキにならい、性能を大幅に向上させるべくフォームとカーボンファイバーを組み合わせているのだ。

ところが、スイスのランニングシューズメーカー「On(オン)」は、フォームの厚底ソールの流行には目もくれない。採用しているのはカーボンファイバーのプレートのみである。

二層構造の秘密

Onの最新かつ最高級のレーシングシューズ「Cloudboom (クラウドブーム)」は、厚いフォームではなく、独自に開発した2層のクッションを使っている。そのクッションとは、「CloudTec(クラウドテック)」と呼ばれる技術に基づくシステムだ。ミッドソールに筒を並べたような構造になっており、地面を踏むたびにこの部分が圧縮される。

Onは快適性と推進力を高めるために、今回はCloudTecを初めて二層構造にした。カーボンファイバーのプレートの上下に1層ずつCloudTecがあり、On独自のクッション素材「Helion(ヘリオン)」が少し組み合わされている。

だが鍵を握る要素は、ミッドソールでCloudTecに挟まれているカーボンプレート「Speedboard(スピードボード)」だ。ここしばらく、このタイプのボードをOnはトレーニングシューズに採用している。だが、カーボンファイバーを配合したプレートはCloudboomが初めてだ。

「通常は滑らかなライド感のためにSpeedboardを使っています」と、Onのフットウェア生産管理部門を率いるエドゥアール・コヨンは言う。「でもこのシューズの場合は、安定感のためにSpeedboardを使おうと考えました。Cloudboomに搭載したSpeedboardは柔軟性のあるプレートではないのです」

最適な構造と素材を求めて

CloudboomのSpeedboardは2方向にカーヴしている。シューズの前から後ろにかけてと、左右の両側面にかけてだ。前後方向のカーヴでは、ゆりかごのような動きが可能になる。この動きによってランナーは、最も効率的なランニングスタイルであると一般的に考えられている、前足部からの着地をやりやすくなる。

左右方向のカーヴは足の動きを模倣するために設計されている。「左右方向のカーヴは、前後方向にとってもゆりかごのような役割を果たし、Onが追求する自然な足の動きのパターンを実現します」と、コヨンは説明する。

コヨンによると、OnはCloudboomの開発に2年かけており、その期間の一部はSpeedboardの設計と設計通りの生産に費やされてきた。「このSpeedboardには数百ものプロトタイプがありました」と、コヨンは言う。

こうしてCloudboomの最終製品用のSpeedboardに配合するカーボンファイバーの比率は、15パーセントに決まった。Speedboardのカーボンファイバー以外の部分は、熱可塑性ポリマーでできている。

「わたしたちは当初、カーボンファイバーの比率を100パーセントにしようとしました」と、コヨンは言う。ところが、そのカーボンプレートでテストしたところ、1kmも走らないうちにプレートは砕けてしまった。「いろいろ試した結果、カーボンファイバーの比率をどこまで下げればプレートが砕けないか、カーボンファイバーの利点をどのような場合に活用すればいいのかわかったのです」

フォームを大量に使わない理由

それではなぜ、Onは他社のようにフォームをもっと使わなかったのだろうか。

「アスリートは(On以外のメーカーが提供している最強のレーシングシューズのような)快適さやクッション性の向上を求めていました。これに対してカーボンファイバー配合のSpeedboardがもたらすのは、むしろ安定感なのです」と、コヨンは説明する。「そこで、クッション性や着地した際の心地よさを加える目的に特化して、CloudTecの層をSpeedboardの上に重ねることにしたのです。この新しい組み合わせを将来のさらに高性能なシューズに生かせればと思っています」

実際にCloudboomを履いて2回走ってみたが、このシューズがOnのランニングシューズ、特に速く走るためのシューズのなかでひときわ優れていることは間違いない。Cloudboomは軽量で、男性用の26.5cmサイズは220gだ。女性用の24.0cmサイズは189gで、競合他社のレーシングシューズの一部とほぼ同じ重量である。

Cloudboomの第一印象は、簡単に速く走れるというものだった。そして、ゆりかごのような形状によって、つま先と中足部でしっかり着地できる。反発性が高いうえグリップ力が強く、かかとのクッション性は抜群だ。アッパーのメッシュ素材は極めて薄く、通気性に優れている。しかし、一般道から外れて丈の高い草の間を走ると、すぐに朝露で靴下が濡れてしまった。

もっとも、多量のフォームを使ったシューズをつくらないがゆえのデメリットもある。Cloudboomはフルマラソンのような長距離レースの場合、こうしたレース用に設計されたほかの多くのカーボンファイバー入りシューズほどは、ランナーをサポートしないかもしれない。というのも、Cloudboomはほかのトレーニングシューズよりクッションが少ないからだ。「(このシューズが)長距離レースで効果を発揮するのは、10kmからハーフマラソンまでだと思います」と、Onのコヨンは言う。

低価格ではないが耐久性あり

価格について言えば、もともとOnの製品は低価格帯ではない。だが、Onはエンジニアリングに多額のコストをかけているハイエンドのランニングブランドと自社を位置づけているだけあり、同社の製品には耐久性がある。

OnはCloudboomの発売に合わせて、高級オーディオメーカーとして知られるデンマークのバング&オルフセンとのコラボレーションも発表した。両社はOnのブランド戦略に沿って、バング&オルフセンのランニング用イヤフォン「Beoplay E8」のデザインを一部変更し、「Beoplay E8 Sport On Edition」を開発した。

なお、Cloudboomの価格は、170ポンド(日本では21,780円)である。競合他社のカーボンファイバー入りシューズには、Cloudboomより低価格な商品も、高い商品もある。ソールにどれほどの量のフォームを求めるかによって、価格は決まるのだ。

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