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無観客もレースは熱く 牡牝の無敗王者が誕生 - 日本経済新聞

無観客という異例の態勢の中で、4月12日に桜花賞(阪神・芝1600メートル)が、19日に皐月賞(中山・芝2000メートル)が行われた。桜花賞は2戦2勝のデアリングタクト(父エピファネイア)が、1番人気の昨年の2歳女王レシステンシアを抑えて優勝。3戦無敗のG1馬コントレイル、サリオスの初対決が注目された皐月賞は、コントレイルがサリオスに競り勝って2つ目のG1タイトルを手にした。無敗のまま戴冠を果たした両馬は、2017年産世代のトップ争いで一歩抜け出した。今後の競馬施行の行方自体が不透明で、平年の注目度には及ばないが、ともにスターの資質を十分に備えている。

■実績馬を一蹴、一気に抜き去る

桜花賞当日の阪神は激しい雨に見舞われて馬場は重。タイムは1分36秒1を要した。1分36秒台で決着したのは実に5年ぶりで、いかに過酷な状態だったかがわかる。レースは逃げた伏兵スマイルカナを2番手からかわし、直線で抜け出したレシステンシアを、後方から1頭だけ追い込んだデアリングタクトが一気に抜き去った。デアリングタクトは3戦3勝となったが、1番人気に推されたことがなく、桜花賞当日も2番人気。ただ、その前のエルフィンステークス(京都・芝1600メートル)の鮮烈な内容が評価された。後方待機から、直線で前の馬を楽な手応えのまま一気に抜き去り、2着と4馬身差。タイムの1分33秒6は、後にG1を7勝したウオッカが2007年に同レースを勝った時より0秒1速かった。斤量はウオッカより2キロ軽い54キロだったが、タイムを要する近年の京都では出色で、にわかに注目を集めた。

 桜花賞を制したデアリングタクト(右端)=共同

桜花賞を制したデアリングタクト(右端)=共同

桜花賞は2歳G1の阪神ジュベナイルフィリーズ、トライアルのG2、チューリップ賞と同じ阪神芝外回り1600メートル戦。当然、この2競走の上位馬が桜花賞でも人気を集める。京都で2戦しただけのデアリングタクトには不利な条件で、しかも身上の末脚を生かしにくい馬場状態。実際、2、3着馬が先行していたことを考えると、18頭中12番手前後の位置から差し切った内容は高く評価できる。良馬場なら切れ味鋭い末脚を使えることは立証済み。次は東京芝2400メートルのオークス(5月24日)だが、距離が持てば二冠の可能性は高い。松山弘平騎手は「デビュー戦からすごくいい脚を持っていたが、磨きがかかった。重い馬場でもこれだけの脚を使えるので、成長していると思う」と手応えを感じたようだ。

デアリングタクトは祖母が05年の桜花賞3着でNHKマイルカップ2着のデアリングハートで、父は現3歳世代が初年度産駒となるエピファネイア(14年ジャパンカップ優勝)。エピファネイア産駒は5月1日時点で、中央では40頭が46勝をあげ、3歳世代限定の種牡馬ランキングでディープインパクト、キズナに次ぐ3位につけているが、重賞勝ちは桜花賞が初めてだった。同馬以外に、1月19日にはスカイグルーヴが京成杯(G3)で2着。4月11日にはシーズンズギフトもG2のニュージーランドトロフィーで2着に入った。初年度産駒が今年、3歳を迎えた種牡馬の中では、キズナの方が活躍が目立ち、既に重賞4勝。桜花賞にも産駒2頭が出走していたが、デアリングタクト1頭の出現で一気に評価を上げた。

■コントレイル、無敗対決制す

2歳G1を含めて3戦無敗の2頭が初の直接対決となれば、例年ならもっと注目を集めただろう。昨年の最優秀2歳牡馬コントレイル(父ディープインパクト)と、朝日杯フューチュリティステークス優勝のサリオス(父ハーツクライ)。ともに皐月賞が今年初戦だったが、2頭とそれ以外の差の大きさを確認する結果となった。

 第80回皐月賞でゴールする、優勝したコントレイル(1)と2着のサリオス(7)=共同

第80回皐月賞でゴールする、優勝したコントレイル(1)と2着のサリオス(7)=共同

デビューの時期こそ違え、新馬、G3、G1と勝ち進み、G3は東京でレコード勝ち。昨年12月のG1から皐月賞直行に至るまで、両馬の歩みはうり二つだった。違いを探せば、コントレイルが昨年末のG1、ホープフルステークスで皐月賞と同じ中山芝2000メートルの舞台を経験していた点。逆にサリオスは1600メートルのみを3戦し、2000メートルが初めて。その点が嫌われ、当日は弥生賞優勝のサトノフラッグに続く3番人気だった。

当日が雨だった桜花賞と違い、皐月賞は前日が雨。当日は晴れて馬場はやや重まで回復したが、タイムは2分0秒7を要した。G1馬2頭は2歳時から好位置で運ぶソツのなさを見せていたが、当日は勝手が違った。好スタートを切ったコントレイルが、「(湿った)馬場を気にしたのか」(福永祐一騎手)進んでいかず、13番手まで位置取りを下げたのだ。一方のサリオスは5番手前後と絶好の位置。「自分にできることは馬を信じるだけ」と、福永は末脚に賭けて後方待機。サリオスのダミアン・レーン騎手は好位置の内でじっくり余力を残した。

3コーナー手前で福永が促すと、エンジンのかかったコントレイルはあっという間に先行グループの外に並びかけ、一気にのみ込む勢いで直線へ。抜け出しかけたコントレイルに、ただ1頭で抵抗したのがサリオス。直線で進路が開くと加速がつき、外のコントレイルに並びかけた。だが、「途中で馬場の悪いところを通った」(レーン)こともあり、最後は2分の1馬身差で屈した。2着と3着ガロアクリークの間に3馬身半差がついた。

コントレイルは、昨年のサートゥルナーリアに続き、ホープフルステークス→皐月賞とG1連勝を果たした。当然、次の目標は日本ダービー。昨年のサートゥルナーリアは、クリストフ・ルメール騎手が騎乗停止でレーンに交代し、当日は出遅れが響いて4着に敗れた。東京未経験でダービーに臨んだ点も影響したと今では考えられている。その点、昨秋に東京のG3を圧勝したコントレイルが、同じ失敗をするとは考えにくい。無観客の継続が決まり、静かな舞台となるのも悪くない。

ただ、皐月賞に不出走のライバル候補もいる。弥生賞2着のワーケア(父ハーツクライ)は、陣営が東京向きと見て、目標をダービーに絞った。零歳時にせり市場で歴代牡馬最高の5億8千万円(税抜き)の高値がつき、初戦勝ちの後、若葉ステークスを好タイムで勝ったディープインパクト産駒アドマイヤビルゴも注目される。

(野元賢一)

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May 02, 2020 at 01:00AM
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