先が見えなくなりつつあった長いトンネルに射した新たな光。果たして、レースシーズン再開は実現するのか。4月15日、国際自転車競技連合(UCI)が中断となっていた2020年シーズンの新たなレースカレンダーを発表。サイクルロードレース界は、7月のシーズン再開を目指して動いていくことになった。今回は、いまのところ明らかにされている2020年シーズンの調整状況をおさらい。選手・関係者のコメントも含めて、ロードレースシーンの「今」をお伝えする。
グランツール、モニュメント開催に向け動き出す
ツール・ド・フランスがおおよそ2カ月スケジュールをずらして8月29日開幕になったことはCyclistでも報じたが、そのほかにもレースシーズン再開に向けた新たな動きが出てきている。
UCIは発表と同日、AIOCC(国際自転車レースオーガナイザー協会)、ツール・ド・フランスなどを主催するA.S.O.(アモリ・スポル・オルガニザシオン)、ジロ・デ・イタリアなどを主催するRCSスポルト、ブエルタ・ア・エスパーニャを主催するウニプブリク、ツール・デ・フランドルなどを主催するフランダースクラシックス、AIGCP(国際プロロードチーム協会)、CPA(プロ選手組合)とのビデオ会議を実施。新型コロナウイルスの感染拡大によってストップしていた2020年シーズンのUCI国際ロードカレンダーに関して、以下の要件のもと改訂することが満場一致で合意に達したとした。
・UCI国際ロードカレンダーの中止期間を1カ月延長し、7月1日までとする。なお、UCIワールドツアーについては8月1日まで中止とする。
・ツール・ド・フランスは延期され、2020年は8月29日から9月20日までの開催とする。この大会が最高の状況下で開催されることは、自転車競技において経済的な中心にあることや露出度、注目度の高さから、この機会に恩恵を受けるチームにとって重要であると判断されている。
・UCIロード世界選手権2020(スイスのエーグル・マルティニーで開催)は、予定通り9月20~27日に開催される。競技プログラムに変更はない。
・ジロ・デ・イタリアはUCIロード世界選手権後に開催され、その後ブエルタ・ア・エスパーニャが行われる。
・国内選手権は8月22~23日の週末に開催される。
・UECロード欧州選手権は維持される。
・最も有名なワンデーロードレース(モニュメント)、すなわちミラノ~サンレモ、ツール・デ・フランドル、パリ~ルーベ、リエージュ~バストーニュ~リエージュ、イル・ロンバルディアは今シーズンのどの日程かで開催される。
・UCI国際ロードカレンダー、特にUCIワールドツアーにおいてはできる限りシーズン後半にリスケジュールされる。
このほか、UCIは遅くとも5月15日までにはUCIウィメンズワールドツアーの改訂版カレンダーと、UCI国際ロードカレンダー全般の新スケジュールを発表できるよう、関係各所との協力のもと作業を進めていくとしている。なお、これは世界の健康状況に依存される部分であることも注記している。
UCIのダヴィ・ラパルティアン会長は、「世界を揺るがす新型コロナウイルスのパンデミックを考慮しながら、2020年シーズンのUCI国際ロードカレンダーの改訂に向けてやるべきことはまだまだ残されている。だが、(上記決定によって)非常に重要なステップがとられた」とコメント。今後に向けては、「各チームのライダーとスタッフの基本的な権利を維持しながら、これらのチームの存続に必要な措置を講じることができるよう意思決定がなされている。われわれはこの危機を乗り越え、パンデミック終息後のサイクリングを再構築する」と、自転車界全体のリーダーとして宣言した。
選手・関係者の反応はさまざま クラスター化の危険性を指摘する声も
この決定を受けた選手や関係者はどんな反応を示しているだろうか。
トップチームの中でも真っ先にポジティブな姿勢を見せたのがアージェードゥーゼール ラモンディアール。フランスではツールとならぶスポーツのビッグイベントであるテニス・全仏オープンも9月延期となっているほか、サッカー・UEFAユーロ2020(ヨーロッパ選手権)、東京2020五輪がともに翌年へ延期。ゼネラルマネージャーのヴァンサン・ラヴァニュ氏はこれらを挙げて、「ツールが2020年世界最大のスポーツイベントになるだろう」とコメント。そんな世界規模のイベントに向けて、チームは当初総合エースを予定していたピエール・ラトゥール(フランス)に加えて、ロマン・バルデ(フランス)もツールへ送り込むことを明言した。
バルデは今シーズン、5月に開催予定だったジロを目標としていたが、この状況によってターゲットを変更することになった。もっとも、ツール後にやってくるロード世界選手権も視野に入れているといい、両レースをセットとして考えたうえでの新たな目標設定のよう。
「UCIによって設定された新たなカレンダーを見る限り、ツールが最大のターゲットになる」と語るのはクリストファー・フルーム(イギリス、チーム イネオス)。こちらも「ツールとのバッティングがない限り」と前置きしたうえで、ロード世界選手権とセットで調子を合わせていきたいという。現時点では、ツール最終日とロード世界選手権個人タイムトライアルとが同日実施になっているが、それをどう判断するか。さらには、「スケジュール次第だが、ジロかブエルタのどちらかも走りたい」と意欲的。昨年のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネで負った複数箇所の骨折はすでに問題ないといい、ハードなトレーニングができるところまで戻ってきているとしている。また、このスケジュール変更がプラスになるとの考えも示し、調子を整えて目標レースに向かっていけると明るい。
昨年のツールでヒーローになったジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)も、「モチベーションが高まるとともに、フランスの人々にも多くの喜びがもたらされる」とツールの延期開催を歓迎する。新型コロナウイルスの感染によって15000人以上が亡くなっている同国だが、開催が実現されれば「健康状態が大きく進化したことを証明する大会になる」と力を込める。グレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー、CCCチーム)も、「今後の感染拡大状況次第で再変更も考えられるが、おおよそのスケジュールを頭に入れることができるのは非常に重要」と、目標設定ができるようになった現況を喜ぶ。
一方で、冷静に先々を占う声もある。他の選手たちと同様にツールを目標に据えるトム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)は、「ツールで勝つためには高地トレーニングが必要」と話す。現在ベルギーに滞在しているというデュムランだが、もし感染の拡大を大幅に食い止めることができず、国と国との移動を含んだ旅行制限が解除できなければ、高地トレーニングを計画することができないと嘆く。「その場合はツール出場しても異なる目標設定をする」。
また、ヨーロッパの専門家からはツールの開催に関して、「プロトンによる街から街への移動が気づかぬうちにウイルス拡散につながる可能性がある」との声も上がる。あらゆる国から選手が集まることも要因となってクラスター化する危険性を指摘。シーズン中断前の3月上旬に活動を休止したチーム イネオスも同様の姿勢を見せ、「状況次第ではツールからチームを撤退させる考えを持っている」とチームプリンシパルのデイヴ・ブレイルスフォード氏のコメントがイギリスメディアで報道された。
現時点では自転車界全体で足並みがそろうまでもう一歩といったところだが、世界情勢に合わせながら、徐々に1つになっていくことだろう。5月15日頃を予定している新たなレースカレンダーの発表も、次なるアクションのきっかけとなるはずだ。
今週の爆走ライダー-イラン・ファンワイルダー(ベルギー、チーム サンウェブ)
「爆走ライダー」とは…
1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。
シーズンの中断期間は、ニューヒーロー候補の予習にも最適だ。そんな中から、今回はベルギーの新星、イラン・ファンワイルダーを紹介しよう。
次々と戦力が生まれる“王国”ベルギーにあって、レムコ・エヴェネプール(ドゥクーニンク・クイックステップ)に続く、将来を嘱望される1人。5月で20歳を迎えるが、その実力は十分にトップレベルにあると評価される。
脚質的にもエヴェネプールに匹敵。ジュニアからアンダー23カテゴリーにかけてはワンデーレースをメインに走ってきたが、それでも「若手の登竜門」ツール・ド・ラヴニールで昨年個人総合3位。石畳から難関山岳まで、あらゆるコースに適応できるあたりがストロングポイントだと自負する。
そんな彼がプロデビューにチーム サンウェブを選んだのは、年齢的に近い選手たちが多いからだとか。「23~24歳の選手が多く、平均年齢の若いチームであることが最大の理由」と話す。昨年まではロット・スーダルの育成チームで走っていたが、当時トップチームでビッグレースを経験していたティシュ・ベノート(ベルギー)とともに現チーム入りできたことが本当にうれしい。オフシーズンのトレーニングキャンプではいつも一緒に走っていたとも。
プロデビュー戦のボルタ・アオ・アルガルベ(2月19~23日、ポルトガル、UCI2.Pro)は個人総合17位。目標にしたいと考えていたツール・デ・フランドルはお預けになったが、秋開催になって出場はかなうか。エヴェネプールと比較されることも多いというが、「5年くらいかけて優勝争いができる選手になりたい」とビジョンは明確。
若くして地に足をつけているこうした選手ほど、大きな成果を残す日が予想以上に早くやってきたりもする。いまのうちから、彼の存在を押さえておいて損はしないはずだ。
福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)
サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU」
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April 22, 2020 at 04:00AM
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